ビルジウォーターに向けて出航

皆さん、こんにちは!「迫り来る波濤」拡張パックのデザインリードを務めるAlexzandros “Careless Whisper” Leeです。「迫り来る波濤」では新地域のビルジウォーターが加わり、複数の新たなキーワードとメカニクスが登場します。

ビルジウォーターで生きるには多少のリスクがつきもの、そしてこの町で幸運をつかむのは大胆な者たちです。そんな土地柄をデザインに取り込み、LoRに新たなタイプのカードを導入しました。たとえばこんな感じです。

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「レイニングバレット」は様々な使い方が可能で、それがこのカードの魅力だと考えています。しかし、カードの説明には潜在的に危険な何かを感じさせる言葉が含まれています。それは──“ランダム”です。そこで、「レイニングバレット」(と「迫り来る波濤」の他の楽しいカード)について話す前に、私たちがレジェンド・オブ・ルーンテラにおいてランダム性をどう考えているのかお話しします──専門用語だらけになりますが…ご了承ください!

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ランダム性は諸刃の剣

カードゲームにおいて、「ランダム」は “刺激の強い”言葉です。その信頼性の無さや“運だのみ”なところを嫌うプレイヤーもいれば、予測できないがゆえの興奮を歓迎するプレイヤーもいます。LoRチームでは、あらゆるタイプのプレイヤーが楽しめて、かつ全体的なゲームバランスを崩さないランダム要素の導入は可能だと考えています。その理由について話すには、まず他に2つの言葉の意味を定義しなくてはなりません──それは「分散」(variance)と「不確実性」(uncertainty)です。

私たちの言葉では、分散は「1つのアクションから得られる可能性がある結果の“範囲”」を意味し、不確実性は「“どの”結果が得られるのかに関する認識の欠如」を意味します。これら2つを合わせて、“ランダム性”と呼ばれるものが生み出されます。これらはデザイナーがゲーム内のランダム要素を調整するために個別に使用するレバーですが、一方に影響を与えずに他方のみを調整することは難しく、分散が高いと不確実性も増加します。

LoRのルールには最初から分散と不確実性の要素がある程度組み込まれており、それはカードゲームジャンルでは一般的なものでもあります。たとえば以下のようなものです。

  • デッキが混ぜられたら、あなたが何を引くかは“不確実”です。
  • あなたがプレイする相手と相手のデッキは“分散”が高くなっています。

引くカードの不確実性は重要です。なぜなら、それによって試合ごとのバリエーションが生まれ、各ラウンド開始時にエキサイティングな瞬間が作り出されるからです。完璧な手札を引けた試合と、コンボカードが半分しか引けなかった試合ではプレイ内容が大きく変わります。試合の流れを引き寄せるために、手札に合わせた別の戦略を探らなくてはなりません。

これら2つの要素を使えば、デザイナーはエキサイティングな手に汗握る体験を作り出せますが、ここで私たちは慎重になる必要があります。なぜなら、ランダム性は諸刃の剣だからです。

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ランダム性が低ければ、LoRが決まりきった変化に乏しいゲームに感じられるでしょう。すべての結果が最初から分かっているので、ゲームプレイ中の選択には厳密な正確性が求められます。逆にランダム性が高過ぎれば、自分の意思では何もコントロールできないと感じてしまいます。勝敗が運で決まるなら、究極的には自分の選択には意味がなくなるからです。

それと同時に、分散と不確実性は、何百試合プレイしようとも、毎回興奮と新鮮味を感じさせてくれる縁の下の力持ちです。この2つはユニークな戦略とエキサイティングなトップデッキを生み出す触媒であり、これらがあるからこそ、適切なカードを適切なタイミングで引いたときに、相手を圧倒して勝利する興奮を味わえるのです。

あらゆることに言えますが、重要なのはバランスです。上手く調整されていれば、ランダム性がスキルに取って代わることはなく、逆にスキルを披露できる新たな方法を生み出してくれます。

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対応力

スキルに意義があるゲームプレイはLoRのデザイン方針のひとつです。ここで言うスキルには以下の3つの要素が存在します。

プランニング(計画力)

試合に勝利するために、事前に(または臨機応変に)計画を立てる能力。それは「イエティデッキだ、つぶせ!」から、「これが相手なら、アレをアレしてアレすれば勝てるな」まで様々です。

インタープリテーション(理解力)

状況を読み、適切なプレイを適切なタイミングで行う能力です。最も阻止すべき敵のスペルを読んで「拒絶」を残しておいたり、相手が対応できないと判断して最大マナで相手をアタックしたりと、これは頭脳が活きる瞬間です。

アダプタビリティ(対応力)

特に不明な情報があるときに、状況の変化に適応する能力です。相手が見たこともないデッキを使っている状況や、「コンボが半分しかないときに、残りが揃うまでどうすれば生き延びられるか?」といった状況に対応できる能力です。

ランダム性が関係してくるのはアダプタビリティで、分散と不確実性に対処するには臨機応変に対応する必要があります。

LoRはゲームルール内にランダム要素が組み込まれていると言いましたが、これらは私たちが“健全な”ランダム性と呼ぶものの例です。つまり、結果に応じて戦術を変更することが可能で、かつ成功するチャンスが残されている状態のことです──たとえば、アグロデッキを使って最初の手札に低コストカードが1つもないのは苦しいですが、だからといってその場で敗北が決まるわけではありません。それとは逆に、コイントスで勝敗が決まるのが“不健全な”ランダム性です──結果が純粋に運に左右されて手を加える余地がなく、最初の攻撃に限らず試合全体がそうなっている状態です。ドラマチックな決着は楽しいものですが(それは皆さんも同じでしょう)、私たちはそれが完全に予想外の結果としてではなく、予測可能なトップデッキをプレイした結果として生まれることを望んでいるのです。

たとえランダムな結果で有利になったとしても、不健全なランダム性は巧みなプレイの楽しさを奪ってしまい、プレイヤーに「運が良かっただけだ」と感じさせてしまいます。また、様々な戦い方を試せないなら、プレイヤーは上達することが難しくなります。

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LoRのランダム要素が健全なものか判断する主な基準のひとつは、ランダム性に対応するための影響力を、プレイヤーがどれだけ持っているかという点です──つまり、「プレイヤーはどのような情報を利用できるのか?」、「何をコントロールして分散と不確実性に影響を与えられるか?」ということです。

カードゲームの基本となるランダム性をもう一度見てみましょう。

  • デッキが混ぜられたら、あなたが何を引くかは“不確実”です。しかし、あなたはデッキをビルドするときに、ある程度は“分散”をコントロールできます。
  • あなたがプレイする相手と相手のデッキは“分散”が高くなっています。しかし、相手の残りマナと相手が使えるカードが分かれば、“不確実性”を下げられます。

プレイヤーが分散と不確実性に対応する方法が存在しないなら、私たちはそれを積極的にゲームに取り入れようとは思いません。なぜなら、それはプレイヤーである皆さんにとっても、積極的に取り入れたいものではないからです。

ランダム要素の健全性を判断する別の基準として、私たちはその「インパクト」(影響力)に注目します。一般的にインパクトが強いほど、ゲーム内における結果や効果は大きくなり、またプレイヤーは望んでいる結果を得るのに、より多くの労力が必要となります。「戦母の呼び声」のようなカードは引き当てることができれば素晴らしいですが、あまり簡単に、また、あまりに頻繁に引けるべきではありません。

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じゃあ、〇〇〇は?あのカードはこの方針に反しているよ!

確かにそうかもしれません。ただ、こうした方針は私たち(そしてこれを読んだあなた!)がカードを評価する上で利用するもので、厳密かつ絶対のルールというわけではありません。時にはクールな効果を得るために境界を超えることもありますし、最初から常にすべてのバランスが取れているわけではありません(「エルヌック」とか!)。私たちにとって重要なことは、あなたが不健全なランダム性に遭遇して、試合の流れを取り戻す方法もない場合に、声をあげてそれを指摘してもらうことです。

以上を踏まえて、私たちが「迫り来る波濤」で行った挑戦についてお話ししましょう。私たちはこの拡張パックが健全なランダム性、そしてビルジウォーターらしい、危険に満ちたならず者のような魅力をLoRにもたらしてくれると考えています。

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あらためて、ビルジウォーターについて

ビルジウォーターにおけるランダム性の仕組みはとてもシンプル──“勝てる勝負に賭ける”、です。ビルジウォーターという地域は、ためらうことなく不正やイカサマを働き、狙った獲物に大量の弾丸を確実に叩き込もうとします。

「レイニングバレット」は一見すると完全にランダムに見えるかもしれませんが、実際は分散と不確実性のレバーを使って、単なるコイントスではない細かなニュアンス(と健全性)を加えてあります。

まず、このカードは同じ敵を2回攻撃できないので、相手がユニットをボードに2体出していたら、確実に両方を攻撃できます(さらにネクサスも削れます!)。完璧な詠唱を決められるように、ビルジウォーターの除去効果を活用して相手に上手く対応し、ボードの状態を整えられるかがポイントです。逆にビルジウォーターを相手にするときは、相手があなたのユニットの体力を1にしようとしているなら(または膝の古傷が痛み始めたなら)、相手が「レイニングバレット」を狙っていることが予測できます。

次に、これが重要なのですが、このカードは詠唱するプレイヤーにとってランダムなだけなのです。「レイニングバレット」の詠唱を確定すると、対象となるユニットが示されます。相手のプレイヤーは何が起こるのかが明確に見えるので、確実な情報を利用して効果的に対応するチャンスがあります。

もうひとつのランダム性を取り入れたカードを見てみましょう。

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「レイニングバレット」と同じく、私たちがこのカードのランダム性が健全だと考える理由は2つあります。

  • このカードをデッキに入れることは、試合ごとに高い適応能力が求められるプレイスタイルを受け入れることを意味し、そのスキルを活かす選択を行ったことになります。
  • 相手は結果がどうなるのか、十分に予測できます。なぜなら、相手は自分のデッキ内の全カードを把握しているので、何を盗まれる可能性があるのか分かるからです。

プレイごとの戦術(「レイニングバレット」など)とデッキの総合的なスタイル(「盗品」など)の両方のランダム性を持ったカードについて、もうひとつの例を見てみましょう。

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我らがザップは、LoRで私たちが実現したいと思っている分散と不確実性の好例です。

  • 分散をコントロールすることで不確実性もコントロールできるようなデッキを構築できれば有利になれます。
  • 相手はあなたが使う別の地域が分かるので、それを有利に働かすことができます。なぜなら、そのコスト範囲のカードを知っていればいるほど、あなたが何を引く可能性があるのかより正確に予測できるからです。

飛び込もう

ランダム性のバランスが上手く取れているか見極めるには、実際にプレイしたときの感覚が大切です。リリースされたカードに対する皆さんのご意見をお待ちしています。「迫り来る波濤」セットの全カードとビルジウォーター地域が現在体験可能ですので(PCとモバイルの両方で利用可能です!)、あなたもランダム性を活かした勝利に挑戦してみてください。